ウサギを飼っている。
彼女はいつも、互い違いに前足の爪を掻いて必死に穴を掘る。
だが、実際には穴などはない。
賃貸アパートの備品たる灰色の絨毯の上に敷かれた、百円のブルーシートを、必死になって掻いているのである。いくら掻こうが、無論、穴は掘れぬ。
穴を掘るのは、アナウサギに生まれた彼女の習性である。掘れねども、掘らねばいられないのだろう。
そして、必死に掻いたブルーシートの端を口にくわえて、ずるずると引きずり、再び互い違いに前足の爪を掻く。引きずる。掻く。
ひとしきり繰り返すと、してやったとばかりに満足げに寝転がる。
ははは。うさぎは阿呆だな。何度も同じ動作を繰り返した結果、穴も掘れず、ブルーシートが乱れただけ。何も生み出してないのに、何をそう満足げに寝るのだ。
と苦笑していて、すわ、と気づいた。
人間の、社会の為す仕事が、はたして何か結果を生み出しているのだろうか。
毎日同じ電車に乗って、パソコンの前で、得意先で、いったい何が生み出されているのだろうか。
ウサギと同じで、ブルーシートを乱して満足してるだけじゃないのだろうか。
むしろ無駄に意味がありそうに見える分、人間以外のどこかの誰かが、ひどく損害を被っているのではなかろうか。
だとしても。
穴が無くとも穴を掘るのである。
明日も明後日も。
習性か、あるいは惰性か。
いや、きっと。
誰もが穴は掘れないと分かった上で、それでも穴を掘ろうとしているのだ。
ブルーシートに穴は開かなくとも、日々の生活が待っているからね。
明日も明後日も。
習性でも、惰性でもなく。
それが人間であるということだから。
⇒ ジェームズ (05/13)
⇒ とろろいも (01/16)
⇒ ポリエモン (12/19)
⇒ ちょーたん (12/15)
⇒ ちんたまん (12/05)
⇒ さもはん (11/27)
⇒ XXまるおXX (11/20)
⇒ 加藤よしはる (11/07)
⇒ 土屋浩平 (11/01)
⇒ きゅーとん (10/24)